倶利伽羅峠の合戦

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砺波山倶利伽羅峠は山頂付近に
倶利伽羅不動明王をまつった倶利伽羅不動寺があるので、
この名で呼ばれます。

倶利伽羅不動尊は燃え盛る炎炎に包まれた剣に
黒いヘビがまきついている強烈な姿をした、不動明王の化身です。

作戦会議の中、義仲は言います。

「数でまさる平家軍と平地でぶつかりあえば数と数の勝負になり
不利である。何としても砺波山の山中でケリをつけたい」

巴、言います。
「同意です。さらに言えば平家方はみな都育ち。この山道はこたえましょう。
対して我ら木曽武者には、山はわが庭のようなもの。
山道の戦いであれば、勝利は間違いありません」

砺波山の東の登り口日宮林に源氏の白旗を30流れ
たなびかせます。

1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦
【1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦】

嶺にのぼった平家方はふもとを見て「おお…すでに源氏の大群が!」
「平地でまともに戦っては不利。ここは砺波山の山中でしばらく様子を見よう」
源氏方のハッタリにまんまとひっかかり、足止めを食らってしまいました。

ひょーっひょーっ

そのうちに源平双方鏑矢を射あって、矢合わせとなります。
矢合わせとは合戦前のあいさつのようなもので、お互いに
鏑矢という大きな音の出る矢をはるか上空に射あいます。

義仲は日中ひたすら鏑矢を射あうばかりで、
「まてまて、時をかせぐのだ」と
まともに戦おうとしませんでした。

そして夜が来ます。

平家方が慣れない山歩きに疲れ果てて鎧を枕にグッスリ
寝ている間に、木曽四天王の一人
樋口次郎兼光の部隊がグルーーとまわりこみはるばるまわりこみ、
倶利伽羅不動尊の脇まで来て、
ワアアッ
時の声を上げます。

1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦
【1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦】

1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦
【1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦】

1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦
【1183年(寿永2年)5月 倶利伽羅峠の合戦】

鎧を枕にぐっすり眠り込んでいた平家方
「ん…んん…はっ!夜襲か!」
「おいっ、起きろ、夜襲だ」
「なに、夜襲?」

平家方が振り返ってみると…

深夜の峠に、源氏の白旗が、
雲のごとくたなびいていました!

「敵だァ!!」

樋口兼光隊が声を上げたのにあわせて
正面からは義仲の本体、南からは今井隊、巴隊、根井隊、北からは依田隊
次々と時の声を上げます。

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前後四万騎がおめく声、
ただ山も川も一度にくずるるとこそ聞こえけれ(「平家物語」)
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この時、義仲は包囲網の一角にわざとスキを作っておきました。

平家方はパニックになって「あそこから逃げられるぞ!」
ワアーーッと押し寄せていきます。

その背後から、

ムオーーッ、ドドドドド…

異様な地響きがします。

「なんだ?」

ムオーッ、ドドドドド…

見ると、深夜の山道に、何百という松明の灯りが見えます。
しかしどうも様子おかしい、
異様なうめき声とともにとんでも無い速さでこちらに迫ってきます。

「あ…あ…」

「牛だァ!!」

両方の角に松明をくくりつけた
何百頭という牛の群れがたけりくるって
突進してきました。

「うわーーっ」

たまらず平家方は
踏みつぶされ、蹴散らされ、
逃げ延びたと思った者の先には、

「ぎゃあああーーー」

深い深い谷の底に次々と落ちていきました。

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岩泉血を流し死骸岡をなせり
さればこの谷のほとりには矢の穴刀の傷
残りて今にありとぞうけたまわる
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世に「火牛の計」といわれる作戦ですが…
「平家物語」には描かれず、「源平盛衰記」の中にのみあります。

≫次章「篠原の合戦」

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