篠原の合戦

倶利伽羅峠の戦いも一段落ついたころ、
平家の陣営では戦が無いときは気のあった仲間同士が集まって、
今日はあいつの所、明日はあいつの所でというふうに、酒を持ち合っては、
飲んでいました。

しかし負け戦が続いてます。酒の味もまずくなってきます。
73歳の斉藤別当実盛は、

「どうであろう、世の中の様子を見るに、源氏はますます勢い盛ん。
一方の平家は負け色じゃ。いっそ木曾殿のもとへ走ろうか」

まわりも、「そうだなあ」なんて言ってましたが、
一晩たってその中に一人の者が、

「いろいろ考えたのだが、我らは東国ではそれなりに名の知られたものだ。
情勢によってあっちに付きこっちに付きでは見苦しい。
他の者はどうだか知らんが、俺は平家にしたがって討ち死にすることにするよ」

すると斉藤別当は大笑いして、

「実はおのおの方に鎌をかけてみたのだ。もとより実盛は
平家に最後まで従い討ち死にの覚悟。
宗盛殿にも他の者にもそう告げてきている」

「おお…」「では私も」

というわけで、その場に居並ぶ人々はその約束をたがえじということか、
一人残らず、北陸篠原の戦いで討ち死にを遂げたのが、いかにも哀れなことでした。

倶利伽羅峠の合戦に破れ、敗走していく平家方を
木曾勢が追い討ちをかけます。

「者ども、平家のバカ息子どもに木曾の戦いぶり、
とくと見せ付けてやれ」

義仲以下、今井樋口根井盾
四天王、そして巴、さんざんに戦い逃げていく平家方に
容赦ない追撃を加えます。

散り散りになって逃げていく平家方。

その中に一人の武者が踏みとどまって
殿として源氏の追撃を防いでいました…

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