徳子の懐妊

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『平家物語』に描かれた平清盛は
けして一面的な悪人、残虐非道な人ではないです。

時に愛嬌があり、時に家族愛にあふれ、
喜怒哀楽のはげしい、人間くさい人物として描かれています。

今回は清盛の人間くささが、特に出ているお話です。

怨霊をなだめる

さて、
清盛はわが娘徳子を時の高倉天皇に妃として
嫁がせました。

そのうにちにご懐妊ということになります。

これで男の子が生まれれば平家の権力はゆるぎない。
千年万年も栄えよと期待が高まります。

ところが、難産でなかなか生まれません。
徳子はウンウン苦しんでいます。

どうも怨霊が祟っているらしい。

平家は権力の階段をワッと駆け上がってきたのです。

その過程で、さまざまな敵を、
あるいは合戦で、あるいは権力闘争で、
蹴落としてきました。

その怨霊が祟っているらしいと。

まず保元の乱で敗れた讃岐院、そして
讃岐院に加担して戦死した藤原頼長(ふじわらのよりなが)、

また今回の鹿谷の陰謀で処刑された
大納言藤原成親(ふじわらのなりちか)、
西光法師(さいこうほうし)、
こういった人々です。

よし、怨霊をなだめよ!ということで、
彼らの墓の前に使いの者をやって官職をさずけます。

保元の乱で敗れた讃岐院のもとへは、配流先の四国の讃岐に
使いの者が行き、「崇徳院」の号をさずけました。

(怨霊になったことや百人一首の歌で知られる
崇徳院ですが、「崇徳院」の号をさずけられたのは
死後10年以上経ってからなんですね)

そして同じく保元の乱で戦死した「宇治の悪左府」こと
藤原頼長には太政大臣正一位(じょういちい)の
位がさずけられます。

あんた出世ですよ。死んでまで出世するなんて
スゴイじゃないですか。だからもう平家を
祟るの止めてくださいね、ということです。

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出産の日

怨霊の怒りがおさまったのか、徳子は
いよいよ産気づきます。

その日、六波羅の池殿 平頼盛の館で、
徳子はいよいよ生まれるということで、ウンウンいってました。

都じゅうからそうそうたる名士が集まってきます。
関白藤原基房、五条大納言藤原邦綱、

また仁和寺の御室守覚法親王、延暦寺の天台座主覚快法親王、
三井寺の円慶法親王など、宗教界のえらい人たち。

そして清盛最大の政敵、後白河法皇も
顔を出します。

政敵といっても、後白河法皇の息子が高倉天皇であり、
その高倉天皇に嫁いだのが清盛の娘徳子ですから、
清盛と後白河法皇は親戚どうしでもあったわけです。

ズラーーッと名士の車が止まり、
引き出物の馬が、屋敷中にひしめきます。

しかしなかなかの難産で、
徳子はウンウンいってました。

清盛は、「どうしたものか、どうしたものか」と、
オロオロしていました。

奥さんの時子(清盛没後出家して二位の尼とよばれる)は、

「あなた、少し落ち着かれたらどうです。
今まで何人も生んできたんですから」
「いや、そうはいってもな…」
そんなやり取りもあったかもしれないですね。

出てきた産婆さんの襟首をつかまえて「おい、どうなっているのだ」
「うわっ!なんですか」「あなた、落ち着きなさい」
「悪かった…。とにかく、よきように、お願いします」
そんなやり取りもあったかもしれないですね。

後に清盛は人に語りました。
「戦の陣であれば、清盛はあれほど
取り乱しはしなかったものを」

後白河法皇は悪霊をはらうため、
数珠をもみもみ、お経を上げていました。

悪霊をはらう時は「よりまし」という子供を
そばに置いて、そこに悪霊を乗り移らせます。

すると乗り移られた子供はヒャッハーーと
踊り狂う、そこへ、うぬぬぬぬと念仏をぶつけて、
悪霊をしずめるわけです。

「この老法師がいるからには、お産の邪魔はさせぬ!」

やがて一族の平重衡が御簾をあげて、言います。

「皇子ご誕生です!!」

ワーーッ!館中で喜びの声が上がります。清盛も
ウォーーーーッ!声を上げて泣きます。

後の安徳天皇です。

入道相国あまりのうれしさに、声を上げてぞなかれける。
よろこび泣きとは是をいふべきにや(平家物語「御産」)

続けて清盛のエピソード、語っていきます。

≫続き 「日宋貿易~経の島と音戸の瀬戸」



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