竹取物語

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竹取物語」は文章というよりも、
絵としておぼえていらっしゃる方が
多いのではないでしょうか?

冒頭の、竹林の中で翁がパァーと光る竹を見つける場面。
クライマックスの、月の世界の御使いが降りてきて、
かぐや姫がのぼっていく場面。

絢爛豪華。にしき絵のような。
印象に残りますよね。

子供のころ絵本やなんかで読んで、その美しい場面に
ほれぼれしたという方も多いのではないでしょうか。

「竹取物語」は、仮名文字で書かれた日本最古の物語といわれます。

源氏物語「絵合」の巻に「物語の出きはじめの祖(おや)なる『竹取の翁』」と書かれています。また源氏物語「蓬生」には「かぐや姫の物語」とあります。

成立・作者

成立は9世紀終わりから10世紀はじめとされますが、
正確な成立年も作者も、わかっていません。

ただし漢文や和歌や仏典の知識がないと書けない文章ですから、
作者はかなり身分の高い教養人であろう、

また、帝がコケにされるなど反体制的な内容が強いですから、
当時権力を握っていた藤原氏方の人間ではあるまいことで、

たとえば僧侶などではなかったかと推測されます。

構成

「竹取物語」のお話は大きく三部に分かれます。

第一部では、翁が山奥でかぐや姫を見つけ、育てる
3か月で大きくなって、きれいな娘さんになるところまで。

第二部は、貴族たちの求婚です。なんと美しい、私と結婚してください
迫る貴族の若者5人に、かぐや姫は無理難題を押し付けます。

無理難題を押し付けられた貴族の若者たち、
ある者はニセモノを作らせ、ある者は金にまかせて
唐土の商人から取り寄せ、ある者は途中で懲りてほっぽり出し…
いずれもうまくいかず、結婚はできません。

第三部では、いよいよかぐや姫のうわさが帝の耳に届きます。
そんなに美しい娘がいるのか。ぜひ妻に迎えたいといってくる、
しかし、かぐや姫は帝の求婚も拒否。

御使いが迎えに来て、かぐや姫は昇天し、月の世界に帰って行くという、
おなじみの筋書きです。

冒頭部分

…というわけで、「竹取物語」
冒頭部分をお読みいたしました。

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「源氏物語」への影響

「源氏物語」には「竹取物語」の影響が強くうかがえます。
「源氏物語」「絵合」の章では、ズバリ竹取物語について語られています。

どんな場面か?

宮中のお遊びとして左右のチームに分かれて、
互いに絵を見せ合うんですね。
これはいいとかイマイチだとかいって。

優劣を競うわけです。その場面に「竹取物語」の絵巻が出てきて、
「物語の出で来はじめの祖なる『竹取の翁』」と紹介されます。
「うつぼ物語」と対決します。

また、

九州で育った玉蔓(かまかずら)という女性が、
ひょんなことから上京して宮仕えをすることになり、、
貴族の男性からモテまくってたくさんプロポーズされる話。

この玉蔓の話には「竹取物語」の影響が見えます。

さらに、

二人の貴族の男性に言い寄られ、運命を翻弄され、、
ついには自害する、浮舟という女性。

この浮船のお話も、「竹取物語」の影響が
強くあらわれています。

『今昔物語』の竹取説話

竹取物語とそっくりの話が『今昔物語』の中にあります。第第31巻第33話「竹取翁、見付女児養語 (たけとりのおきな、をむなごをみつけてやしなふこと)」です。冒頭で翁が竹林の中で小さな女の子をみつけ、金持ちになっていくまでは、ほぼ同じです。

しかしその後の展開は、細かい所が違っています。

求婚者の数
『竹取物語』は5人だが『今昔物語』は3人です。
求婚者に姫が要求する宝物
『竹取物語』では「仏の御石の鉢」(『西域記』)「蓬莱の玉の枝」(「列子」)、火鼠の皮衣(『神異記』)、「竜の頸の玉」(『荘子』)、など中国の古典や経典にねざしたものだが、『今昔物語』では「優曇華(うどんげ)の花」以外は「空に鳴る雷(いかずち)」「打たぬに鳴る鼓」など民間説話風のものになっています。
求婚者の名前
『竹取物語』ではあべのみむらじなど実在の人物の名前がつけられ性格づけもされています。『今昔物語』の求婚者に名前は無く性格づけもありません。「其の時のもろもろの上達部・殿上人」とだけ書かれています。
富士の場面
『竹取物語』ラストの富士の場面が『今昔物語』にはありません。

こうした共通点や相違点から、 おそらく『竹取物語』と『今昔物語』の竹取説話、それぞれの元となった 「原竹取物語」とでも言うべきものがあって、そこから 『竹取物語』『今昔物語』それぞれへ枝分かれしたと思われます。

冒頭部分 今は昔

原文

いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり。野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。名をば、さぬきのみやつことなむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。

翁いふやう、「我朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になりたまふべき人なめり」とて、手にうち入れて、家へ持ちて来ぬ。妻の嫗にあづけてやしなはす。うつくしきこと、かぎりなし。いとをさなければ、籠に入れてやしなふ。

たけとりの翁、竹を取るに、この子を見つけて後に竹取るに、節をへだてて、よごとに、黄金ある竹を見つくることかさなりぬ。かくて、翁やうやうゆたかになりゆく。

この児、やしなふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪あげなどとかくして髪あげさせ、裳着す。帳の内よりもいださず、いつきやしなふ。

この児のかたちの顕証なること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁、心地悪しく苦しき時も、この子を見れば苦しきこともやみぬ。腹立たしきこともなぐさみけり。

翁、竹を取ること、久しくなりぬ。勢、猛の者になりにけり。この子いと大きになりぬれば、名を、御室戸斎部の秋田をよびて、つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫と、つけつ。このほど、三日、うちふげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけきらはず集へて、いとかしこく遊ぶ。

現代語訳

今となっては昔のことだが、竹取の翁という者があった。野山に入って竹を取っては、いろいろなことに使っていた。名をさぬきのみやつこといった。

その竹の中に、なんと根元が光る竹が一筋あった。不思議に思って寄ってみると、竹筒の中が光っている。見ると、三寸ぐらいのとても美しい人がそこにいる。

翁が言うことには「私が朝ごと、夕べごとに見ている竹の中に、あなたがいらっしゃるのでわかったのです。あなたは私の子となるべきお方のようです」と言って、手にのせて家に持ち帰った。

妻のばあさんに預けて養わせた。そのかわいらしさは、この上も無い。とても小さいので、カゴに入れて養った。

竹取の翁が竹を取るとき、この子を見つけて以後、竹取るときは、竹の節と節の間の空間に、黄金が入っている竹をみつけることが重なった。こうして翁はだんだん豊かになっていった。

この子を養っているうちに、すくすくと大きく成長していった。三ヶ月ほどですっかり大人になったので、女の子が大人の女性になった証である髪上げのお祝いをいろいろと祝って、髪あげをさせ、大人の女性が着る「裳」というものを着させた。

竹取の翁夫婦はこの子を帳のうちから一歩も出さず、大切に養った。

この子の容貌は世にありえないほど際立って美しく、部屋の中には暗い所が無くなり光で満たされた。翁は気持が落ちこんで苦しい時も、この子を見れば苦しいことも無くなった。腹立たしい時も、気持がまぎれた。

翁はその後も小金の入った竹を取ることが重なった。それで、大富豪になった。この子がたいそう大きくなったので、御室戸斎部の秋田を呼んで、名前をつけさせた。秋田は「なよ竹のかぐや姫」と名づけた。

この時、姫の命名を祝って三日間盛大に管弦の宴を開いた。さまざまに音楽をかなでた。男はわけへだて無く呼び集めて、とても盛大な管弦の宴であった。

五人の求婚者への難題

美しく成長したかぐや姫のもとに、
たくさんの求婚者が言い寄ってきます。
それも名門貴族の、お金持ちの若者ばかりです。

私と結婚してください。いや、私とこそ結婚してください。

しかし、かぐや姫はツーンとして、心動かしません。

へーえ、そんなに私と結婚したいですか。じゃ、
これこれこういうモノを持ってきてください、
プレゼントを要求します。それも、
ぜったい手に入らないようなものばかりです。

石作の皇子(いしつくりのみこ)には仏の石の鉢(ほとけのいしのはち)、
車持の皇子(くらもちのみこ)には蓬莱の玉の枝(ほうらいのたまのえ)、
右大臣阿倍の御主人(うだいじんあべのみむらじ)には火鼠の皮衣(ひねずみのかわぎぬ)、
大伴大納言(おおとものだいなごん)には竜の首の玉(りゅうのくびのたま)、
石上の中納(いそのかみのちゅうなごん)には言燕の子安貝(つばくらめのこやすがい)

それぞれの求婚者に、かぐや姫は無茶なプレゼントを要求します。

蓬莱の玉の枝

五人の求婚者の中に車持の皇子は、
蓬莱の玉の枝を要求されました。

はるか海のかなたの蓬莱山に、
光りかがやく玉の枝があるのです。
それを取ってきてくださいと。

しかし車持の皇子は計画的な方でした。
とてもそんな宝物は手に入らないとわかってます。
バカらしい。そんなんマジメにやってられっかと。

職人をやとってニセモノをつくらせました。
ズルしたんですね。

しばらく身をかくしていて、船で帰ってきたそぶりをして、
いかにも大冒険から帰ってきたみたいに、おおげさに演出しました。

この場面は、翁からの質問に対して、
石作の皇子が架空の大冒険を語る場面です。
ある時は波に流され、ある時は鬼に追いかけられ、
たいへんな苦労の末に手に入れたんです、
だから娘さんをください!そういう場面です。

原文

『これやわが求むる山ならむ」と思ひて、さすがに怖しく思えて、山のめぐりをさしめぐらして、二三日ばかり見ありくに、天人の装ひしたる女山の中より出で来て、銀(しろがね)の鋺(かなまる)を持ちて水を汲みありく。これを見て舟よりおりて、『この山の名を何とか申す』ととふ。女答へていはく、『これは蓬莱の山なり』と答ふ。これを聞くに嬉しき事限りなし。

現代語訳

「これか私の求めていた蓬莱山だろうか」と思いましたが
さすがに怖ろしく思えて、山の周囲をめぐり歩いて
二三日ばかり景色を見てまわっておりました。

すると天人の格好をした女が山の中から出てきて、
銀のお椀であちこち水を汲んでいます。

これを見て舟からおりて「この山の名を
何と申しますか」と質問しました。すると女が答えていうには
「これは蓬莱の山です」という答えでした。

これを聞いた時の嬉しさといったら、
大変なものでした。

さらに車持の皇子のホラ話は続きます。

原文

その山を見るに、さらに上るべきようなし。その山のそばひらを巡れば、世の中になき花の木ども立てり。金・銀・瑠璃色の水、山より流れ出でたり。それには色々の玉の橋渡せり。
そのあたりに照り輝く木ども立てり。その中に、この取りて持ちて来たりしは、いとわろかりしかども、宣(のたま)ひしに違はましかばと、この花を折りてまうで来たるなり。

現代語訳

その山を見ると、とても上れるようなものではありません。

その山の傍らを巡り歩いておりますと、
普通には無いような花の咲いた木がたくさん立っております。
金・銀・瑠璃色の水が山から流れ出し、
その流れにさまざまな玉の橋がかけてあります。

その橋の付近に、照り輝く木がたくさん立っていました。その中に、
(私が折り取ってまいりましたこの枝は)それほど見栄えのしないものですが、
おっしゃられたものともし違っていたら…
いや、違うことはなかろうと、この花を折って、持ってまいったのです。

ふじの山

結局、五人の求婚者をことわり、帝からの求婚も断わり、
かぐや姫は天の御使いに連れられて月の世界へ帰っていきます。

お別れの時かぐや姫は帝に不老不死の薬を託します。
帝はこれをじいさんばあさんに届けさせますが、
「かぐや姫がいなくなって生きながらえても仕方ない」と
じいさんばあさんは断ります。

帝もまた、「かぐや姫がいない今、不老不死の薬など意味が無い」、
という意味の歌を詠みになり、その歌と、薬の壷と、
駿河の国でいちばん高い山にもっていって、燃やすようお命じになりました。

これが「ふじの山」の語源で、現在まで富士山からは
この時の煙がたちのぼっているということです。

原文

御文薬の壷並べて、火をつけて燃やすべき仰せ給ふ。その由承りて、兵ども数多(あまた)具して山へ登りけるよりなん、その山をふしの山とは名付けける。その煙、未だ雲の中へ立ち上るとぞ言ひ伝へたる。

現代語訳

帝は、ご自分の歌と不老不死の薬の壷を並べて、
(駿河の国の山に持っていって)
火をつけて燃やすよう、お命じになられた。

帝のご命令を受けて、たくさんの警護の武士をつれて
山にのぼった。このことから、その山を「ふじの山」と名づけたのだ。

その煙はいまだに雲の中に立ち上っていると言い伝えられている。

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