福原「遷都」

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以仁王の乱の混乱もさめやらぬ中、
清盛はとんでも無いことを言い出します。

「福原へ都を遷す!」
「は?…何とおっしゃいましたか?」

「福原へ都を遷すのだ!
今回の以仁王の件では、園城寺、興福寺が生意気にも
足をひっぱりおった。また延暦寺とて
いつ平家の敵となるか知れたものでは無い!

京の都にいる限り、
いちいち坊主どもの機嫌をうかがわねばならん。
もう耐えられぬッ!」

「しかしだからといって…
平安京は桓武天皇がお開きになって以来400年の歴史があり、
また平氏発祥の地でもあります。いきなり遷都というのは…」

「やかましい!遷すといったら遷す!」

無謀すぎた遷都計画

というわけで5月30日に遷都を決定、
6月2日早朝、安徳天皇、高倉上皇、後白河法皇をつれて
都を出ます。その夜は摂津大物浦(だいもつのうら。
現兵庫県尼崎のあたり)で一泊。
翌3日早朝に福原に入ります。早いです。

清盛をネタに観光を盛り上げようという神戸には悪いんですが、
清盛の福原遷都計画は、無謀というほか無いものでした。

比叡山や興福寺、園城寺などの寺社勢力から距離を置く、ということが
一番の動機だったようですが…。

だっていきなり都を移すなんていっても、京都、歴史がある町ですよ。
代々の御屋敷とかあるわけじゃないですか。
カンタンな話じゃないです。新しい屋敷も手配できない。
中には京都の館を壊して、その私財を車に乗せて、
福原までもっていって、それで館を建てた人もいました。

立派な御屋敷のある貴族もそうですけど、
庶民も大変だったでしょうね。商売やってたら、
お得意さんがあるわけじゃないですか。

堀川通りの御屋敷のダンナは、代々うちの織物をひいきにしてくれるんだ、
なんて言ってたのが、いきなり都移りで、引っ越していっちゃう、
暮らしがメチャクチャになります。

「はあ…相国さまは何を考えておられるのだ!」
「もうだいぶ御年だし、アレかなあ…」
なんてことを言い合っていたかもしれません。

福原側にも受け入れ態勢がまったく整っていませんでした。
天皇や上皇がお住まいになる御所すらありませんでした。
仕方なく平家一門の館に入り、仮の御所としましたが、
お供に付き添ってきた人々はロクな宿所も無く、
道端で座り込むというありさまでした。

また福原は都を築くには幅が無さすぎました。
北はすぐに山、南はすぐに海です。

京都の町は中国の長安にならい、
北から一条二条三条四条…九条まで通りが整然と並びますが、
福原には五条までしか通りを作る余裕がありませんでした。

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踏んだり蹴ったり

また福原遷都騒動の間、悪いことが重なります。
干ばつと疫病の流行。高倉上皇も重い病にかかってしまいます。

そして、

以仁王の令旨を受け、
8月には伊豆で源頼朝が平家の代官山木兼隆の館を襲撃。
9月には信濃で木曽義仲が平家方の笠原頼直(かさわらよりただ)を越後に追います。

10月には富士川で源頼朝の率いる軍勢に平家軍が大敗。

踏んだり蹴ったりです。平家の内部からも不満の声が上がります。

「こんな、都遷しなんて、どだいムリだったんです。話にならないッ!」
「なにッ!!」

普段はおとなしく清盛に逆らわない三男の宗盛が、
今度ばかりは清盛と激しく言い争い、皆を驚かせました
(『玉葉』治承4年11月5日条)。

さらに、

遷都に不満をいだく比叡山延暦寺が脅迫をかけてきます。
京都にもどらないと、山城と近江を占領すると!

とうとう清盛も折れて、京都に戻ることに同意します。
11月26日安徳天皇、高倉上皇、後白河法皇以下、
平家一門の人々こぞって福原から京都へ引き上げます。

こうして福原遷都計画は、わずか半年で挫折しました。

車や馬がダーーと街道いっぱいに満ち満ちて、
その中に清盛を乗せた車も、引き上げていく。
くそっ、わずか半年で引き揚げとは!
さぞや清盛、地団太を踏んだと思います。

福原落ち

これより三年後の寿永2年(1183年)7月25日、
木曽義仲に都を追われた平家一門は西国へ落ち延びていく途中、
福原に立ち寄ります。この時すでに清盛は世を去っています。

春は花見の岡の御所、秋は月見の浜の御所、
また冬は雪見の御所…

清盛が築いた、絢爛豪華な御屋敷の数々は、
3年のうちに見る影も無く荒れ果てていました。

平家一門は福原で一夜を過ごし、翌朝内裏に火をかけて
西国へ落ち延びていきました。

「ああ!燃えていく!相国さまの築かれた福原の町が!ああ!」
なんて言って、嘆いたことと思います。

≫続き 「南都焼き討ち」



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