一人当千!長谷部信連

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前回につづき、以仁王の反乱。
今回の見どころ聴きどころは
平家物語最大の見せ場「名乗り」です。

しかも「平家物語」の中で最初の名乗り。
名乗りを上げるのは長谷部信連という以仁王につかえる侍です。

以仁王 女装して脱出

五月十五夜の雲間の月をながめつつ、以仁王はものうげに
ぼんやりしておられますと、ドタバタ、ドタバタ

「たいへんです!ご謀反の件、すでに六波羅に発覚ッ!」
「なに!バレたと!?」

「ただ今源三位入道殿から御使いの方が見えられ、
急ぎ御所を出て、三井寺へお逃げくださいと」

以仁王のそばにお仕えしている侍長谷部信連(はせべののぶつら)が言います。
「こうなっては仕方ありません。少しでも六波羅の目をあざむくため、
女房装束になってお逃げください」
「われに女装をせよというのか!!」

市女笠をかぶって、カズキっていうフワフワした布をかぶって、
昔話の絵本やなんかに出てくる感じですね。

「うう…30歳過ぎてこんなマネをせねばならんとは…」

そんなことつぶやいたかわからないですが。

女房装束になった以仁王はわずかなお供をつれて、
高倉通りを北へ逃げます。

以仁王 高倉通りを北へ
以仁王 高倉通りを北へ

途中大きな溝があったのでヒラッと飛び越えると、
見ていた人が「なんとはしたない女子じゃ」なんて
言いました。

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長谷部信連 一人で御所をまもる

長谷部信連は16歳で滝口の武士という
宮中警護の武士として採用されます。
ある時院の御所に強盗が入り込んだのを一人で
4人を打ち取り2人を生け捕りにします。
この功により左衛門尉に任じられました。

トコトン強い人です。
長谷部信連。こういうたのもしい侍が、
以仁王のおそばにお仕えしていました。

さて、

長谷部信連は以仁王を女装させて逃がし、
御所に仕えている女房たちをも逃がします。
「お前たち、早く逃げるがよい。戦になるぞ」

ふいと見ると、以仁王お気に入りの笛「小枝」が残っている、
「ああ…宮さまはきっと笛を取りにお戻りになるに違いない」

信連は笛をもって、逃げていく以仁王の後を追います。

「宮さま!宮さま!」

後ろから呼びかける声に女装した以仁王が振り向くと、

「笛をお忘れです」

「おお…信連
これを忘れては死んでも悔いるところであった。
よく届けてくれた。信連、
私が死んだら、この笛をともに棺に納めてくれ。
さあ、信連、お前もともに逃げよう」

「いえ、私が宮様の御所に
お仕えしていることは誰もが知っております。
逃げたと思われるのは恥です。
引き返します」

ダッと引き返していく信連。
「これ信連!」これぞ主従今生の別れ。
二度と二人が生きて会うことはありませんでした。

御所にもどった長谷部信連は、
三条大路に面した正門を開け放ち、
高倉小路に面した小門を開け放ち、
今か今かと敵を待ち受けます。

そこへ!

ドカドカドカドカ
軍馬の音が。

「高倉宮ご謀反の聞こえあるによって、
宣旨のお使いとして参った。
はやく出てこい!!」

ようは、逮捕状を持ってきた。
はやく降参しろということです。

長谷部信連は、デーンと大床に立って、
「はあ?宮さまはただ今いらっしゃらんッ。何の用じゃ?」

「いない?いないことがあるか。狭い御所でどこに隠れられよう。
お前たち、踏み込め。謀反人をひっとらえろ」

ダダダーと検非違使の役人たちが踏み込んできます。
カーッとなった長谷部信連、そこで名乗りを上げます!

「名乗り」は平家物語で一番の花です。最大の見せ場です。
やあやあわれこそはという、あれ。カッコいい、花があります。
平家物語を最初から読んでいくと、一番最初に出てくる名乗りが、
この長谷部信連の名乗りです。たまんないですよ。原文でいきます。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
「物もおぼえぬ官人どもが申様かな。
馬に乗ながら門のうちへ参るだにも奇怪(きっかい)なるに、
下部共まいってさがしまいらせよとは、
いかで申すぞ。左兵衛尉(さひょうえのじょう)信連が候ぞ。
ちかうよってあやまちすな」
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
一人が
「じゃかあしいわ!!」

大床の上に飛び上がると、
ワーッと十四五人、手に手に太刀や長刀を持って続きます。

信連は刀を抜きはらって、デアーと切りつけると、
切られたほうはドカーッと庭に弾き飛ばされる、

「せ、宣旨のお使いを切るとは、
そのほう、どういうつもりじゃ!!」
「何が宣旨じゃッ!!」

ズバア、また一人切りつけて、

ダダダダダ、駈け出す信連。

「捕えよ!!」

ワーーッ!追いかける役人たち。

五月十五夜の雲間の月あらわれ出でて、
あたりをあかあかと照らし出します。

しかし!

信連にとっては長年お仕えしてきた
以仁王の御所です。すみからすみまで知り抜いています。

部屋から部屋へ、廊下から廊下へと走り回り、
ぶさー!あっちで切り殺し、ぎゃあー!こっちで尽き刺し…
十四五人いた検非違使の役人どもをたちまちに
切り伏せたところに、

ガチーーン! 噛み合う太刀と太刀。
ぐぬぬぬ…カン、キン、カーン!

と、
次に打ち込んだ時、

パキーーン!!

太刀の切っ先三寸ほど、弾き飛ばされてしまいます!

「もはやこれまで…。宮様、時は十分にかせぎましたぞ。
御無事でお逃げください…」

なんてことを言ったかどうかわかりませんが、
腹をさぐると鞘巻が無い。自害することもできない。

ヌガーーッ!!

信連は両手を広げ、
高倉小路に面した小門からダーッと表に躍り出たところに、

死ねやーッ!!

敵が、長刀をかまえて突っかかってくる。

信連、どりゃあと飛び上がって、
長刀の上に踏み乗ろうとする、しかし、乗り損なって、
体を崩したところに!
ズバーー!太腿を長刀でなぎ払われ、
ドターー!

「今だ!」検非違使の役人どもがいっせいに飛びかかり、
とうとう信連、生け捕りにされてしまいました。

引っ立てられた長谷部信連

長谷部信連、六波羅に引っ立てられます。
後ろに手がまわって、庭にすわらされている、
そこへ、清盛の三男宗盛が問いただします。

「宣旨のお使いを切るとは…
そのほう、自分がやったことがわかっているのかッ!」

ところが信連は悪びれた様子もなく、
堂々と言い放ちます。

「強盗や山賊という連中は「宣旨だ」などと言って
人をだますといいます。それで切り殺したのです。
もっとよい刀があれば、一人も生きて返さぬところでした。
また宮さまの行方は、まったく存じません。
もし知っていたとしても侍たる者が、
どんな尋問を受けたところで決して話すわけはございません」

(うーん…なんという堂々とした態度)

清盛はじめ平家一門の人々は信連の態度に感心します。

それで普通なら死罪にされるところを、
伯耆国に島流しという軽い刑ですまされました。

後に平家がほろび源氏が政権をにぎると、
頼朝は信連を御家人として取り立て、
能登国の領土を与えたということです。

≫続き 「三井寺」



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