梶原の二度懸

生田口開戦~河原兄弟の討死

一方、一の谷の東・生田の森でもまだ夜が明けないうちから戦闘が始まりました。

生田口
【生田口】

河原太郎次郎兄弟、生田口へ攻め込む
【河原太郎次郎兄弟、生田口へ攻め込む】

まず源氏方から河原太郎次郎兄弟が卯の刻午前6時の戦闘開始を
待ちきれず、逆茂木を躍り越え、一の谷の城塞の中に
斬りこんでいきます。

しかし平家軍に矢を射かけられアッという間に射殺されます。

河原太郎次郎兄弟が討たれたと聞いた梶原景時、

「ちっ…うかつに先駆けを許すから無駄に味方を失うことになる。
今や夜も明けた。攻め寄せよ!」

配下の足軽に逆茂木を取り除かせ、一の谷の城塞の中へ五百騎で
駆け入ります。

梶原景時、生田口へ攻め込む
【梶原景時、生田口へ攻め込む】

梶原景時

梶原景時。頼朝が旗揚げした際、石橋山の合戦で敗れますが、
その時洞窟の中にかくれていた頼朝をわざと見逃し、その功績により
後に鎌倉幕府の御家人として重用されたといいます。

俗に「梶原の讒言」といって義経のことを頼朝にいろいろ悪く報告し、
義経没落の原因を作ったと言われますね。

そのため悪人のイメージが強い人物ですが、悪人梶原のイメージは主に江戸時代に
歌舞伎や講談の中で形づくられたものです。

わかりやすい勧善懲悪の物語の中で悲劇のヒーロー義経と対比する形で
悪人梶原像が形づくられていきました。

その意味では清盛と同じく、後世の人に勝手なイメージを押し付けられた
不幸な人物といえるかもしれません。

近年はむしろ優秀な官僚だった、憎まれ役を一身に引き受けたなどの
肯定的な評価もふえています。

今回の大河ドラマでは梶原景時、どのように描かれるのかわかりませんが、
おそらく単なる悪人扱いでは無いと思います。

次男景高の先駆け

…梶原景時、長男の源太景季、次男の平二景高、三男の景茂とともに
一の谷の城塞に駆け入ります。

梶原景時、源太景季、平二景高、景茂
【梶原景時、源太景季、平二景高、景茂】

しかし次男の景高が、はるか前方を先駆けしていました。
景時は使者を飛ばし、「後に続くものを置いて先駆けをはやる者には
恩賞を与えるなと大将軍のお達しであるぞ」

平二景高、先駆け
【平二景高、先駆け】

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しかし次男景高は、

「一度放った矢がもうもとには戻らないように、
武士がいったん駆けだした以上、引き返すことはできません」

そんな意味の歌を詠んで答えとします。

「仕方のない奴じゃ。続けや者ども。景高を討たせるな!」

梶原の二度駆け

景時以下、長男の源太景季(かげすえ)、三男の景茂(かげもち)
500騎で敵大勢の中に駆け入り、さんざんに戦いわずか50騎ばかりに
討ちなされ、ざっと駆け破って通ったところ、
長男源太景季の姿が見えません。

「おい!源太はどうした?」
「どうやら敵に討たれたようです」

「討たれたようです…ではないッ!
世に長らえんと思うもひとえに子のため。
源太を討たれて、なんの甲斐ある命ぞ!」
「お屋形さま!お屋形さま!」

郎党が止めるのも聞かず、梶原、バカバカバカバカーと
敵陣の中に引き返し、

「昔後三年の御戦いに片目を射ぬかれながも功名を上げし鎌倉景正が末裔、
梶原平三景時。一人当千のつわものぞやーッ!!」

平家方の生田の森の大将軍新中納言知盛は、
「梶原は東国にきこえるつわものぞ。漏らすな!討ち取れ!」

ワーッと襲い掛かりますが、
梶原は、わが身は一切顧みず、

「源太はいずこーーッ!!」

数万騎の大勢のなかを、縦に、横に、蜘蛛手に、十文字にかけ割り、
かけまはりバカバカバカバガーッと駆けていくと!

梶原の二度駆け
【梶原の二度駆け】

長男源太景季は、戦の激しさに甲があみだに傾き、
馬も射抜かれ徒歩でもって、郎党二人とともに
敵五人を相手に必死に防ぎ戦っていました。

「おお!源太は生きておった!」

梶原は急ぎ馬より飛び降り、

「景時ここにあり。いかに源太。死ぬるとも敵にうしろを見せるな!!」

親子して五人の敵のうち三人を切り伏せ二人に傷を負わせ、
「弓矢取りは進むも退くもその時次第じゃ。さあ来い源太」

長男景季をわが馬に担ぎ上げて、またバカバカバカーと戦場から駆け去ったという、
世に「梶原の二度駆け」とよばれる壮絶な逸話です。

≫次章「坂落し」



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